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昭和酒場
 
 
思い立って、昨日は昭和の酒場、それもきわめつけの2店に行くことにした。 
 
南千住の駅から南に歩くと、そこは泪橋だジョー。 
って、それはハタ坊だジョー。 
 
泪橋は漫画「あしたのジョー」の丹下段平ジムが、そのたもとにあったことで有名。 
現実の川は地下に流れていて橋などないのだが、 
泪橋は江戸時代、刑場との境にあって、 
その橋がこの世とあの世の境のようになっていたという。 
 
現在は、その泪橋を境に山谷の街が広がる。 
山谷は季節労働者の集まる、いわゆるドヤ街。 
かつては治安の悪さでも有名で、一般人を寄せつけない街の雰囲気は、 
直接は経験していないが、おそらく大阪の西成や天王寺地区と双璧であったことだろう。 
天王寺を30年近く前に訪れたときは、職や家のないおじさんたちが街角にあふれ、 
その時は身の危険は感じなかったが、それでもちょっと気をゆるめるとヤバいという 
雰囲気が忘れられない。 
 
そんな天王寺界隈も、今や温泉レジャー施設もでき、 
家族連れが訪れる骨抜きのような町になっているが、 
ここ山谷も天王寺ほどではないにせよ、 
海外からのバックパッカーが安宿を求めて訪れる、安全な町になっていた。 
 
それでも、昼から呑んでたむろする人や、 
何もせずに道ばたに座っている人や、道ばたで寝ているおじさんもちらほら。 
目的の店は、そんな山谷の目抜き通りの道沿いにある。 
 
大衆酒場「大林(だいりん)」。時間は午後3時半を過ぎたころ。 
外見は何の変哲もない店構えだが、中に入ると空気は一変する。 
2階まであると思われる高い天井。 
余計なものがいっさい置かれていない広い店内には、 
年期の入った木のテーブルと、木のカウンターが手前と奥に2つ。 
L字型のカウンターの中には広々としたスペースがとってあり、 
愛想のない60歳代と思われる主人がでんと立っている。 
そして、店の中には背筋を正した粋な空気が流れている。 
 
壁にはお品書きの白い短冊がいくつも張られ、 
その下の小窓からは、これまた年期の入った厨房がかい間見える。 
片方の壁が木製の小窓になっていて、外には庭のスペースがあり、 
外の光と木々の眩しさが、薄暗い店内にまだ慣れていない目に映える。 
 
昭和の30年代前後で完全に時が止まっている。 
 
控えめにつけられているテレビの競馬中継の音さえ、 
何か懐かしいあの日を感じさせて、 
店にいる数名のお客さんの話し声も、その空気のなかに溶けていくようだ。 
 
ビール大瓶に金宮のハイボール。 
お通しは茄子の煮浸し。つまみには煮込みとニラ玉を注文した。 
ハイボールは、焼酎と氷の入ったコップを客の目の前に置き、 
オヤジさんが黙って炭酸の瓶を三分の二くらいどっと注いで、瓶をカタンと置く。 
 
その仕草からも年期が伺え、今まで何人の客に炭酸を注いで来たのだろうと、 
ふと思う。しばしの酔いに身を任せ、 
この店がこの空間がいつまでもここにあってほしいという、 
思いをかみしめながら、店をあとにした。 
 
 
 
その後、ふたたび山谷の町を散策し、 
今度は少し歩いた三ノ輪橋の駅から、都営荒川線に乗る。 
思えば、東京に来て四半世紀経つが、荒川線に乗るのは初めてだ。 
 
日曜の夕方のちょっとだけせわしい乗客たちをのみこんで、 
電車は専用軌道をごとごと走りながら西へ向かい、 
夷申塚に着いたころにはすっかり暗くなっていた。 
 
次の店は駅から歩いて1分のところにある、その名も「夷申酒場」。 
開店が午後7時からと遅いので、そのまま巣鴨地蔵通りをぷらぷら歩く。 
日曜の夜ともあってか、開いている店もほとんどない暗い商店街で時間をつぶす。 
そろそろと思い、店の前に戻るとまだ開いていない。 
今日は休みなのか?  
もう少し待ってみようと駅のホームのベンチに腰をかけ待つ事30分後、 
店の中に灯りがつきだし、ようやく女店主が幅の狭い暖簾をかけた。 
 
カウンターだけで9人くらいが座れるL字型。 
けっして広いとはいえない店内は、こちらも昭和30年前後で時が止まっており、 
「大林」の粋な静に対して、こちらは朽ち果てた静。 
カウンターの中では、小柄で80歳は越えているかもしれないおばあさんが、 
ゆっくりとした動きでお酒を用意してくれている。 
 
壁にあるお品書きはお酒飲み。 
何か出来るものはないかと聞いてみると、豆腐は?とのこと。 
それではと注文すると、切り目が入った絹ごし豆腐が一丁。 
一丁まるまるの冷や奴は、木場の「河本」にもあるが、 
あそこは半分の小が選べる。 
2軒目だから食べきれるかと心配だったが、それはそれ。 
豆腐大好きなので何なくぺろり。 
 
開店から10分もしないうちにすべての席が埋まる。 
この店の人気の高さがうかがえるが、 
話によると最近テレビ番組で紹介されたらしく、 
しかもそれがとんねるずの「きたなシュラン」という、 
汚くて旨い店を紹介するコーナー。 
そこにここのおでんとカレーが取り上げられ、しばらくは物見遊山的な 
若い人が多く訪れたという。 
 
今ではそれもだいぶ落ち着き、以前の雰囲気に戻りつつあるそうだが、 
何でまたそんな取材をこの期に及んで受けちゃったんだろう? 
まあ、それは謎だが、カレーとあっちゃあ、 
カレー好きにとっては食べないわけにもいかない。 
 
冷蔵庫にストックされているルーが鍋で温められる。 
湯気をたてたルーがまあるいシチュー皿の半分くらいに入れられ、 
そこにフランスパンのカットがつく。 
昔の食堂などで出されていた、 
色が少し黄色っぽいどろっとしたルーで、味はやや辛めだ。 
 
旨い。なんか、とっても平凡な味がするのだけれど、 
それがかえって非凡なのだ。 
とんねるずの認定書が壁に貼られていて、そこには★がふたつ半。 
でも、この旨さは舌の肥えた芸能人にはわかるまい。 
いや、もう忘れてしまったにちがいない。 
 
酒呑みのおじさんたちが通い続けた朽ち果てそうな酒場で、 
おばあちゃんが作るカレー。 
 
あと何回かでもいいから、このカレーをまた食べたい。 
そう思って、朽ち果てた店の造りとは似つかわしいくらいに 
賑やかであたたかい雰囲気のその店を後にした。 
 
当然この2店とも、マイ酒場遺産に登録されている。

外呑み | 23:39:32 | トラックバック(0) | コメント(8)
コメント
No title
カ酒蔵かと思いました。
2011-08-29 月 15:32:57 | URL | MQ~ [編集]
No title
MQ~ さん

あれ、まだ何も書いてないけど。写真だけのときに見たね。
2011-08-29 月 15:47:19 | URL | 本人 [編集]
No title
ここまで来たのなら鐘淵の酎ハイ横町まで行ってみればよいのに。
2011-08-29 月 16:53:10 | URL | 謎の監督ウッティさん [編集]
No title
謎の監督ウッティさんさん
一応、昭和レトロの雰囲気を求めにいったので、
おっちゃんの雰囲気はまた今度にしますです。
2011-08-29 月 20:47:05 | URL | 本人 [編集]
No title
下町良いなぁ〜
私が行った頃の山谷は、上野からタクシーで行ったんですが
運ちゃんに「派出所の前までで勘弁してよ。」って言われました。
トランクに積んであった木刀を見せてもらったのが懐かしいです。
不良イラン人対策だって。
2011-08-29 月 23:24:04 | URL | MQ~ [編集]
No title
名文ですね。
お店に対する深い愛のなせる技と思います。
是非行ってみたいです。
2011-08-29 月 23:33:19 | URL | サッシー [編集]
No title
MQ~さん
歌舞伎町だって、ひと昔はそこそこだったですもんね。
今は、夜に女子高生が歩いている。
2011-08-30 火 15:38:13 | URL | 本人 [編集]
No title
サッシーさん
自分の琴線がふれる位置は人とズレていると思いますが、
よろしければ、お声かけくださいな。
どちらも、現存するうちに何度でも行きたい店です。
2011-08-30 火 15:41:30 | URL | 本人 [編集]
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